パッケージデザインにおいては、見栄えを追求するだけでなく、お客様に対して、商品の価値や、作り手の思いを伝えることも重要です。今回、ご紹介する「ミルクジャムミニ」は、小さな箱型と、牛のイラストが印象的。このパッケージデザインに込められた思いを、有限会社 十勝しんむら牧場・代表取締役 新村浩隆さんにお話を伺いました。
「ミルクジャムミニ」のパッケージデザインにおける工夫
――ミルクジャムミニは、パッケージの形が特徴的ですね。なぜ、あのような形状にされたのでしょうか?
新村さん(以下、新村):もともと、カバンに入れてランチタイムに使っていたただいたり、会議中のコーヒーに入れたり、そういう使い方ができる「携帯用のミルクジャム」を作りたいと考えていました。でも、ジャムのビンを持ち歩くことは現実的には難しいと思います。ですので、あのような持ち歩きやすい形状を採用することにしました。
タバコよりちょっと小さいくらいのサイズですので、ポケットに入れることもできます。また、パッケージの箱には勝手に開かないように、フタがロックされる機能もついているんですよ。
――パッケージの色合いにおいて、こだわった点について教えてください。
新村:手に持ったときやテーブルに置いたとき、かっこ悪くないような、ちょっと遊び心のあるデザインにしたいと思いました。リッチな印象を出すために、ゴールドやシルバーの色使いにしています。
パッケージデザインは、商品の価値を伝えるもの
――パッケージには「牛」がプリントされていますが、イラストに込められた思いを教えてください。
新村:ミルクジャムミニのコンセプトは「健康な牛からとれたおいしい牛乳で作ったジャム」です。酪農家が作った商品であることをお客様に伝えるために、牛のイラストをプリントしています。この牛は当牧場のCIでもあるのですが、決める際には非常に苦労しました。うちで実際に飼っている牛を何頭か組み合わせて、デザインをしたんです。
――新村さんは、パッケージデザインにおいて何が大切だと思いますか? また、どのような層をターゲットと想定してデザインをされましたか?
新村:デザインは、商品の価値を「伝える」ものです。お客様に商品を手に取ってもらうためには、デザインはすごく重要になると思います。
市場に流通している商品には、シンプルでかっこいいデザインのものも多く存在しています。それはそれで良いとも思いますが、私としては、やはり伝えたいメッセージがパッケージに込められていないと、デザインの役割は果たせないのではないかと考えています。
ミルクジャムミニは、特に健康志向の方、新鮮な食材をとりたい方にお届けしたいと考えているので、そういう方々に響くようなパッケージデザインを心がけました。ただ、このようなデザインですので、洋服屋さんや雑貨屋さんに置いていただくこともあり、実際には幅広い年齢・性別・ライフスタイルの方にご支持をいただけているようです。
いいパッケージデザインを完成させるには、デザイナーとのコミュニケーションが大切
――今後、パッケージ印刷業界に希望することは何ですか?
新村:印刷の価格は安いほうがいいですよね。ただ、私はいいパッケージデザインを完成させるには、印刷技術や紙質などよりも、「デザイナーとのコミュニケーション」が大切だと思っています。いかに「商品に込めた思い」を汲み取ってもらうかに重きを置いています。
ミルクジャムミニに携わったデザイナーは、素人の私たちにも完成品が想像しやすいように、時間をかけてダミーを作ってくれました。そういったコミュニケーションがとれていれば、極端な話ではありますが、技術や紙質などはどのようなものでもいいんじゃないかと思いますね。
――最後に、ミルクジャムミニの商品の魅力についてご説明ください。
新村:ミルクジャムミニは、シンプルに牛乳と砂糖を煮詰めて作っています。牧場で搾りたての牛乳を、その日のうちにジャムにしているので、素材のおいしさには自信があります。濃厚ですが、後味はさっぱりしているんです。小さな子どもの離乳食にも合いますし、お年寄りでも食べられます。お客様から「食が細かったおばあちゃんが、ミルクジャムのおかげで、パンが食べられるようになったんです」という声をお寄せいただいたときはうれしかったですね。あらゆる年齢層の方に、牛乳のおいしさを感じていただける商品だと思っています。
――詳しくお聞かせいただき、誠にありがとうございました。
【取材協力】
有限会社 十勝しんむら牧場