食べ物は、その見た目から味わうもの。高級レストランや料亭などに足を運ぶと、そう実感するのではないでしょうか。そこには、料理が完成に至るまでの物語が見え隠れするようです。
これは自宅で食べる食品、あるいは贈り物などでも同じことが言えるのかもしれません。その一部を担うのが、やはりパッケージでしょう。今回ご紹介する井原水産の「おさかなのたまご」は、中身である商品を見ること無く、そのパッケージが何かを訴えかけてくるかのようにすら感じられます。
ご紹介するパッケージ「おさかなのたまご」
どのような商品も、開発者の思い、あるいは商品完成に至るまでの試行錯誤が詰まっています。しかしそうした思いは、残念ながら「食べる」という行為のみで感じ取れるものではないでしょう。井原水産株式会社の「おさかなのたまご」は、パッケージにメッセージを込めています。
一見すると本のようなパッケージ。縦に置くと、下部には帯のようなデザインまで施してあるのが特徴的です。その中には、明太子や数の子をはじめとして、こだわりぬいた海の幸が詰まっています。
しかしパッケージを開くと、まず目に飛び込んでくるのは商品そのものではありません。パッケージの蓋部分に添えられているのは、各商品に関する説明書。ただ美味しいだけでなく、その商品をより深くしってもらうための工夫と言えるでしょう。
また、この「おさかなのたまご」は、サイズにも気を配っています。食卓に置かれても違和感のない手頃なサイズ。全5種類ありますが、すべてテーブル上に揃えておいても邪魔になりません。食品であるということを踏まえた配慮が嬉しいパッケージです。
このパッケージ戦略に関する個人的見解
誰にとっても身近な「食」。中には日本のみで愛される、伝統的な食材も少なくないでしょう。「おさかなのたまご」が採用された明太子などの各食品は、まさにその1つと言えます。そして海の幸といえば、贈り物やお土産にもよく用いられるもの。そうした背景を受けてか、井原水産株式会社の経営理念には、次のような一文が見られます。
「日本の食文化を守り、食を通じてお客様の健康に寄与する。」
【井原水産株式会社コーポレートサイトより引用】
日本の食文化を守る。パッケージに添えられた説明書、そして何かを物語る本型のパッケージは、そうした思いから発想されたのではないでしょうか。
さらに「健康」には、栄養面などだけでなく、精神面における健康が意識されていることが感じられます。パッケージが送り手ともらい手との思いを繋ぎ、食卓ではその斬新さやメッセージから明るい会話と笑顔が生まれる。まさに身体的・精神的な両面での健康と言えるでしょう。
食べ物は、どうしても「食べたら終わり」になりがちです。しかし「おさかなのたまご」はまず説明書を読むことからはじまり、食べ終えた後にもそのパッケージが印象として残ります。
パッケージへの工夫が、食べることの楽しみを、さらに広げてくれるように思えます。
このパッケージ戦略から学べること
この「おさかなのたまご」パッケージの最大の特徴は、なんといっても「説明書という情報的付加価値」です。パッケージを本の形にすることで、パッケージを開けたら「食材」ではなく、説明書を見せることができます。説明書は食材のこだわりなどが書かれていますから、まさにこれから食べる食材の詳しい内容を知ることができるわけです。「食前の物語」とでも言えるような工夫ですね。
このような工夫は、パッケージ戦略という目線から見た場合、「パッケージの付加価値は、パッケージの形にあわせてつけることもできる」といえます。「本」の形・デザインをしているから、説明書という付加価値を付けられた、そう考えることができます。
では、あなたの今関わっている案件のパッケージはどんな形ですか?そこからどんな付加価値を付けられますでしょうか?逆に考えるなら、こんな付加価値をつけたいなら、どんなパッケージの形がいいでしょうか?その視点でパッケージ戦略を考えると面白いアイディアが膨らむかもしれません。
<写真URL>
http://www.j-ck.com/works/design/2008/ihara/index.html