日本には、創業から長く続く“老舗”と呼ばれる企業がいくつも存在します。食品や化粧品、あるいは薬品など、長く親しまれるパッケージデザインも少なくありません。そうした製品は、多くの人々が一目見ただけで「あそこの製品だ」と気づくでしょう。愛着はブランドの価値にも繋がり、そのうえでパッケージデザインは大切な意味を持ちます。
今回ご紹介する和光堂の「シッカロール」は、そんな伝統ある製品の1つ。1906年の発売から100年以上にわたり、多くの人々から愛されてきたスキンケア用品です。赤ちゃんから高齢者まで幅広い世代に利用されており、過去に使用経験がある、あるいは見たことがあるという方は多いのではないでしょうか。
パッケージ紹介「シッカーロール」
白い紙箱に、青で書かれた『siccarol』の文字。そして目を引くのが、可愛らしい小さな子どもの写真です。
シッカロールはおむつかぶれや汗疹などから肌を守るベビーパウダー。もちろん大人でも利用できますが、この子どもの写真はベビーパウダーとして製品を象徴するものとなっています。
箱の蓋を開ければ、そこには白いパウダーが。白を基調としたパッケージデザインとマッチしており、まさに白はシッカロールのメインカラーと言えるでしょう。
そんなシッカロールは、時代と共にそのパッケージも変化してきました。当初は紙箱ではなく缶が用いられており、そこに描かれていたのは腹巻きをした子ども。そこから子どもと母親の姿へと変わり、中には文字のみのパッケージもあったようです。
白地に子どもの写真が大きく用いられたパッケージは、1963年から登場したとのこと。その後もデザインこそ変化はあるものの、愛くるしい子どもの写真を中心として、製品とともにパッケージもまた長く親しまれています。
このパッケージデザインに関する個人的見解
100年以上にもわたり親しまれる製品。その品質はもちろんですが、パッケージが消費者に与える印象もまた大切な要素ではないでしょうか。一目見て分かるパッケージ。陳列された多くの製品の中から「やっぱりシッカロールにしよう」と選択してもらううえで、分かりやすさは1つのポイントと言えそうです。Twitterでは次のような投稿も見られ、シッカロールが製品名以上に、そのパッケージで強い印象を持たれていることが分かります。
「そう、実家にあったのはまさにシッカロールだったんですが、常にぱっぱっ粉と呼んでました。(パッケージに書いてあるのに)シッカロールなんて名前を認識したのは大人になってからでした。」(@bergkaiserJul)
また、本製品は人の肌に触れるもののため、やはりその安全性にも目が向けられるでしょう。和光堂の公式サイトには、次のような一文が見られました。
「何よりも大切でデリケートな赤ちゃんのための育児品は、安全で、子育てをする方が安心して使えるものでなければなりません。そのために「品質」は、私たちがお客様にお約束する一番大切な価値と考えています。」
【和光堂公式サイトより引用】
赤ちゃんに多く使われる製品だからこそ、可愛らしい子どもの写真を配置したパッケージ。その優しく無垢な笑顔からは、確かに安心感を得られるのではないでしょうか。あるいは大人が使用するうえでも、肌のデリケートな子どもが笑顔になれる製品ならば、安心して手に取ることができそうです。そのうえで、パッケージに違わぬ品質を持ちうることこそ、シッカロールが長く愛される理由なのかもしれません。
このパッケージデザインから学べること
このシッカロールのパッケージデザインから、「ロングセラーを生み出すパッケージのあるべき姿」のヒントが学べます。
シッカロールは100年以上も愛され続ける超ロングセラー商品ですが、そのシッカロールのパッケージデザインの歴史を見ると、面白いことがわかります。
家庭薬ロングセラー物語「シッカロール」
上記のページの中ほどをみると、シッカロールのパッケージデザインの歴史が簡単にまとめられています。そのパッケージデザインの歴史をみていると、すべてのデザインに「赤ちゃん」が描かれています。たったこれだけのことですが、このこだわりの強さこそが、ロングセラーを生み出すパッケージのあるべき姿なのかもしれません。
ここからは私の想像の領域でしかありませんが、パッケージデザインを長期間、一貫性をもたせることで、2つの効果が生まれるのではないかと考えています。
1つ目は、品質の高さを訴求できるという効果です。赤ちゃんのデザインが常に描かれていることで、赤ちゃんのあせも対策のための商品であることが印象深くなります。その結果、ベビーパウダーならシッカロールという方程式が成立し始めるのです。事実、現在はそのようになっているようです。
2つ目は、変わらない品質を訴求できるという効果です。ずっと同じデザインですので、以前使った商品と変わっていないという印象を与えることができます。だから安心して使い続けられます。だから世代が変わっても売れるというわけです。
この2つの効果こそが、ロングセラーを支えているのではないでしょうか?