日本には100年以上もの歴史を持つ老舗が数多く存在し、旅行・出張などでは、そうした老舗の味をお土産に持ち帰るという方が多いでしょう。特にお菓子は伝統に守られた味わいが広く愛され、定番化しているものも少なくありません。しかし中にはその伝統を守りながら、限定パッケージなど買い手を楽しませる工夫に余念のない企業も。今回ご紹介するのは、豊島屋の『鳩サブレー』。鎌倉土産としてまさに定番ですが、鎌倉本店でしか手に入らない、限定パッケージをご紹介しましょう。
パッケージ紹介
(豊島屋 )
豊島屋の『鳩サブレー』は、これまでお土産に受け取ったり、ご自身で購入されたりしたことのある方も多いはず。目を引く黄色いパッケージが特徴です。しかしそんな『鳩サブレー』に、鎌倉本店限定パッケージが存在することをご存知でしょうか。
限定パッケージは青を基調としており、持ち手のあるカバン型。メイン部分には豊島屋とそこに訪れた鳩たちが描かれた、可愛らしいデザインです。家族連れやカップル、学生など。観光客を模した鳩は、手に定番カラーである黄色い『鳩サブレー』の袋を持っています。持ち手部分は青空になっていて、とても色鮮やかです。さらにパッケージの側部にも鳩が描かれ、細かな工夫が目立ちます。
分析と個人的見解
パッケージに描かれた鳩は、まさに鎌倉を訪れた観光客を表現したものでしょう。修学旅行の学生、家族旅行客、あるいはデートに訪れたカップルなど。パッケージに、自分自身を重ねて見られるデザインと言えそうです。可愛い鳩たちのイラストからは、喜びや楽しさといった感情が感じ取れるかのよう。見ているだけで、こちらが楽しくなってきます。
そのコンセプトには、やはり豊島屋の思いがあるのでしょう。公式ホームページを見ると、次のようなメッセージが掲載されていました。
「「お客様の笑顔」を求め、製造に携わる者はてまえどものお菓子をお客様が召上がって頂いた時の笑顔を求め、販売を行うものは、笑顔の接客はもちろん、お買い求めるお客様が笑顔になるような接客を目指し、日々精進させていただいております。」(豊島屋公式サイトより )
お客様の笑顔を作りたい。これは接客だけでなく、パッケージも同様に込められているのではないでしょうか。そのパッケージを見た瞬間、あるいはお土産として受け取った瞬間に笑顔になれる。そしてもちろん、伝統に守られた美味しさがさらに笑顔を引き出します。どんなパッケージなら、笑顔で手に取ってもらえるか。これを考え抜いたデザインと言えそうです。実際、この限定パッケージについては、SNSでもさまざまな声が飛び交っています。
「せっかく鎌倉来たし、豊島屋本店に! 限定デザインの鳩サブレー可愛い(っ´ω`c)」(@leaf7020gcさん)
「こないだ鎌倉で買ってきた家族へのおみやげ鳩サブレー超可愛い💕💕本店限定柄パッケージなんだって!大事に取っとこう。鳩が??鳩がかわいい?!!!」(@vivix_x さん)
「昨日の鎌倉本店限定鳩サブレーのBOXが可愛い。車のナンバーまでハトだ」(@mira_neko さん)
「鳩サブレ本店限定パッケージ可愛い 自分用に買った鳩サブレを食べる」(@yuzu_umee さん)
SNSの投稿を見るだけで、パッケージを手に取った方々のテンションの高さが分かります。可愛いという声が多く、きっと喜びの笑顔でデザインを目にしていることでしょう。旅行などのお土産はもちろん、“自分用”に購入して帰る方も多い様子。限定ということで特別感があり、これを購入するためだけに本店を訪れたという声もありました。お土産であれば、まさに笑顔を届けてくれるパッケージデザインと言えるのではないでしょうか。
このパッケージデザインから学べること
過去のこのブログでも掲載していますが、「地域限定」や「期間限定」で一般品とは別のパッケージを作ることは良く見られることです。「限定」することにより経済学用語での「希少性の原理」が働き付加価値を出すことができます。とはいえ、ただやみくもに「限定」を作ればよいのではなく、あくまで「付加」価値なので、一般品でパッケージを含め充分に市場に認知されている状態に対して、そのブランドを損なわない「限定」とそれを表現した「パッケージ」によって価値を高めています。商品は同じでも「パッケージ」が限定のために価値があがる(=高い価格設定ができる)ことは、まさにパッケージデザインによる付加価値です。ブランドを損なわずむしろ高めることができる限定デザインに、ぜひ挑戦してみてください。