イベントと連動したパッケージデザインから、今後のパッケージ戦略のヒントを学ぶ

和風デザイン
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日本の食文化において、長い伝統と歴史と持つ和菓子。その種類は多様であり、自宅での楽しみ、あるいは贈答など幅広いシーンで親しまれています。羊羹といえば、まさにそんな和菓子の代表格と言えるでしょう。

しかし和菓子は、味わいだけを楽しむものではありません。その見た目もまた、1つ1つこだわり抜かれたものばかりです。それは和菓子そのものだけでなく、和菓子を包むパッケージにも言えることではないでしょうか。

今回のコラムでは、宮城県仙台市の老舗である「白松がモナカ本舗」が、仙台七夕まつりで販売した「仙台七夕ミニヨーカン」をご紹介します。『東北三大祭り』に数えられる七夕まつり。そのコンセプトに寄り添い、特別に造られたデザインのパッケージです。

「白松がモナカ本舗」公式サイト

パッケージ紹介「仙台七夕ミニヨーカン」

仙台七夕まつりでは、個性的かつ豪華な七夕飾りが、アーケード街を埋め尽くします。色合いや形状は実にさまざま。人々が歩き、触れることで揺れ動く七夕飾りは、なんとも形容のしがたい優雅さを感じられます。

「仙台七夕ミニヨーカン」の横長の箱には、商品名と共に色鮮やかな七夕飾りのイラストが。真っ白なパッケージに、その優しい色合いが際立ちます。

パッケージの写真
(個人の方のブログへリンクしています。2015年12月の本コラム執筆時点では写真が確認できましたが、今後、削除等される可能性があります)

商品名こそ添えられているものの、誰もが一目見て、これが七夕まつりにまつわる品であると理解できるでしょう。そのため、お土産などにも最適といえそうです。

箱を開けてみると、今度は中から小さな7つの箱が。

パッケージの写真
(個人の方のブログへリンクしています。2015年12月の本コラム執筆時点では写真が確認できましたが、今後、削除等される可能性があります)

これもまた外箱と同じく、真っ白な背景の中に七夕飾りが描かれていました。しかし異なるのは、七夕飾り以外に風景イラストも描かれている点。これらは、仙台の名所が描かれたものです。

その優しげなデザインは、古き好き日本というものを感じさせてくれます。まさに羊羹という和菓子の伝統、そして古くから続く仙台七夕まつりの歴史を損なうことなく、むしろ素晴らしいコラボレーションが実現したデザインといえるのではないでしょうか。仙台七夕飾りのために訪れ、歩いて回った仙台という街。その思い出を、このパッケージはいつまでも忘れず思い出させてくれそうです。

このパッケージ戦略に関する個人的見解

仙台の誇る銘菓『白松がヨーカン』。その味は地元民のみならず、全国の方々から人気を持ちます。その理由は、やはり「白松がモナカ本舗」の和菓子作りに向けた姿勢にあるようです。公式サイトを見てみると、次のように書かれていました。

「昭和60年に赤坂工場を近代的衛生設備を誇る主力工場とし完成させ、以来『より良い製品をより安く』を信条に、特に厳選された最高の原料と丁寧な技術を用いた和菓子づくりを継承してまいりました。お陰様をもちまして全国名菓としてたくさんのお客さまより御愛顧いただけるようになりました。」

白松がモナカ本舗公式サイトより引用】

多くの人々に、美味しい和菓子を身近なものとして楽しんでほしい。そうした思いが感じられる気がします。

そして『仙台七夕ミニヨーカン』のパッケージもまた、このコンセプトに沿ったデザインといえるのではないでしょうか。

シンプルでありながら、親しみやすさのあるデザイン。そして『仙台七夕まつり』というイベントでの特別販売だからこそ、デザインもまた特別なものを。お土産に受け取った人々まで、七夕まつりの雰囲気を感じることができます。

一方で七夕まつりもまた、日本という歴史の中でその伝統を守ってきました。公式サイトを見れば、そのことが記されています。

「仙台七夕は、古くは藩祖伊達政宗公の時代から続く伝統行事として受け継がれ、 今日では日本古来の星祭りの優雅さと飾りの豪華絢爛さを併せ持つお祭りとして全国に名を馳せております。」

仙台七夕まつり公式サイトより引用】

伊達政宗といえば、戦国から江戸の時代にかけて活躍した武将。当時の人々が、どのような思いでこの七夕まつりを作り上げ、楽しんできたのか。それは、もちろん知るよしもないことでしょう。しかしこのパッケージからは、少なくともその伝統と雰囲気を感じ取ることができるのではないでしょうか。和菓子の味わいと七夕まつりの持つ歴史。その双方が持つ伝統を上手く組み合わせたパッケージデザインです。

このパッケージ戦略から学べること

今回のパッケージの例から、「今後のパッケージ戦略のヒント」を学ぶことができます。

上述したように、今回のパッケージは、「仙台七夕まつり」というイベントと連動させたパッケージデザインです。パッケージを「仙台七夕まつり」に合わせて制作することで、中身は「白松がモナカ本舗」の羊羹であることには変わりありませんが、「仙台七夕まつりの仙台土産」という新しい価値が生まれており、その結果、購入する機会(拡販)が増えています。

このように、イベントに合わせてパッケージを変えるというのは、商品を拡販する上で、非常に重要なパッケージ戦略と言えます。

この点を深慮すると、こう言ったイベントは、「仙台七夕まつり」だけでなく、年間を通して、クリスマスやバレンタイン、父・母の日などがあります。そのため、その度にパッケージを変えて、新しい価値を提案することで、商品の販売力が向上する可能性があります。

クリスマスなら、「クリスマスプレゼント用パッケージ」を制作し、プレゼントという新しい価値を提案することができますね!

さらに、イベントだけでなく、ターゲットを変えて価値を提案することもできます。例えば、インバウンド向けパッケージ(外国人観光客向けのパッケージ)です。インバウンド向けパッケージを制作することで、海外向けへの販路開拓にパッケージを活用することもできます。

このように、パッケージをイベントや新しいターゲット(外国人観光客など)に合わせて柔軟に変更することで、新しい価値が生まれます。それが今後のパッケージ戦略の1つの方向性ではないでしょうか?