日常でよく使うものの中にも、目を引くようなデザインのパッケージは意外と溢れています。今回ご紹介する「パーフェクト・スライス・オブ・サマー」は、キンバリークラーク社が有する「クリネックスブランド」のティッシュボックス。日本国内はもちろん海外でも多く利用されるクリネックスは、誰でも一度は使ったことがあるのではないでしょうか。
2009年にアメリカでヒットした「パーフェクト・スライス・オブ・サマー」は、同年のパッケージデザインのコンペ「ペンタワード」にエントリー。最高位の賞である「ダイヤモンド・アワード」を授賞しました。そんな「パーフェクト・スライス・オブ・サマー」の魅力を、探ってみましょう。
ご紹介するパッケージ「パーフェクト・スライス・オブ・サマー」
「パーフェクト・スライス・オブ・サマー」が開発された背景は、夏場のティッシュの売上にあると言います。クリネックスは、夏になると売上が急落するティッシュの販売数を食い止めようと思案。購買意欲を引き立てるデザインを模索した結果、この「パーフェクト・スライス・オブ・サマー」が生まれました。
そのデザインは、見るからにみずみずしいフルーツ。スイカやオレンジ、パイナップルなど、暑い夏ならばつい手を伸ばして食べたくなるようなものばかりです。三角形の箱も、ティッシュとしては珍しいでしょう。その頂上部に取り出し口があり、使用中でもそのデザインを損ないません。
しかもこの「パーフェクト・スライス・オブ・サマー」は、6つ合わせるとフルーツの断面が完成します。消費者からすれば、「どうせ使うものだし、揃えてみたい」というコレクション欲を掻き立てられる仕組みです。使ってしまうのがもったいないくらい、フルーツの断面が忠実に再現されたデザイン。使い終わってからも、部屋の片隅に置いておきたくなりそうです。
「パーフェクト・スライス・オブ・サマーを日本で買えるところないだろうか。」
(@ryokayan)
アメリカ国内外で販売された「パーフェクト・スライス・オブ・サマー」に対し、Twitterではこのような意見も寄せられています。海外展開は欧州が中心で、残念ながら日本を始めアジアでは未だ発売されていませんが、そのデザインが、日本においても魅力的に映るということが分かります。
このパッケージ戦略に関する個人的見解
「パーフェクト・スライス・オブ・サマー」のデザインを制作したのは、ロサンゼルス在住のイラストレーターであるHIROKO SANDERS氏。「パーフェクト・スライス・オブ・サマー」は海外のみでの販売となりましたが、飲料など国内で販売されている商品パッケージも手がけています。その色鮮やかなデザインの数々は、いずれも人々の目を引きつけることでしょう。
そんなHIROKO SANDERS氏のポートフォリオを見ると、フード系デザインを含むさまざまな受賞歴もあり、食に関する分野での精通さも伺えます。
どのような商品でも、時期やタイミングによって売れ行きは異なるものです。誰にとっても身近なティッシュであれ、それは同じなのでしょう。そんな中、夏をターゲットに開発された「パーフェクト・スライス・オブ・サマー」。そのデザインは、まさに季節にマッチしたものと言えそうです。
ただ色みや斬新さでインパクトを与えるのではなく、純粋に消費者の気持ちを読み取り、そこに刺さるデザインを提供する。クリネックス、そしてHIROKO SANDERS氏にとって、まさに渾身のパッケージデザインと言えるのではないでしょうか。
このパッケージ戦略から学べること
このパッケージ戦略から、2つのことが学べます。
1つ目は、「購入点数の増加を実現するデザイン」です。商品の売り上げを上げる方法の1つに、「1回あたりの購入点数を増やす」という手法があります。「パーフェクト・スライス・オブ・サマー」は個の購入点数の増加を狙ったパッケージデザインを行っているように思えます。
本記事内でもご紹介した通り、「パーフェクト・スライス・オブ・サマー」は「6つ合わせるとフルーツの断面が完成」します。これは、1回の購入で「6つ買ってもらう」という狙いが隠されているのではないでしょうか?
上記サイトでも、ティッシュペーパーは「5個入り」が多いです。私の予想でしかありませんが、「6つ合わせる」という意図は、「もう1つ多く買ってもらう」という狙いがあるように思えます。
2つ目は、「売れない時期にデザインを合わせる」という戦略です。商品には必ず売れる時期と売れない時期があります。その「売れない時期」に合わせて戦略的なデザインを構築している点が面白いです。
この売れない時期に「あえて買ってもらうためのデザインは何がいいのか?」に焦点を当てて、パッケージ戦略やデザインを考えると、面白いアイディアが出てくるかもしれませんね。
「パーフェクト・スライス・オブ・サマー」のご紹介
HIROKO SANDERS氏のホームページで紹介されています。たくさんの事例があるので、一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。
また「ダイヤモンド・アワード」を受賞した際のサイトは下記から確認できます。
http://www.pentawards.org/winners/?p=11522